エッチな小説コンテストをやります

エッチな小説コンテストやります

嘘みたいな企画なんですけど、エッチな小説を読ませてもらいま賞というショートショートのコンテストをやります。審査員長に暴力と破滅の運び手さん、ゲスト審査員に橋本輝幸さん、フマノヒトさんをお迎えしています。

募集期間は2023年1月10日(火)〜1月15日(日)で、文字数は2,000字〜4,000字です。よかったらみなさまご応募ください。

なんでそんな企画をするの?

ことの発端は2022年3月に遡ります。私は普段、Kaguya PlanetというオンラインSF誌のコーディネーターをしています。そこに掲載した枯木枕「となりあう呼吸」という作品があります。「となりあう呼吸」は世代を経るごとに身体が脆くなっていく世界を描いた作品です。
この「となりあう呼吸」について暴力と破滅の運び手さんが「エッチだ」と呟いていたのです。


「となりあう呼吸」には身体性の話などは出てくるのですが、いわゆる性的なシーンは全然出てきません。それなのに、「エッチだ」と評されているのを見たときに妙な納得感がありました。
私は小説を読むときに「エッチかどうか」という評価軸(?)がなかったので、この感想はとても面白かったのです。そしてこれはぜひ、暴力と破滅の運び手さんを審査員長にお招きして、応募された作品がエッチがどうかを独断と偏見でバシバシ決めてもらうコンテストをしなければ!と思ったのでした。

興味を持たれた方はこれを機に「となりあう呼吸」を読んでみてください。無料で公開しています。暴力と破滅の運び手さんのエッチの好みがわかるかもしれないし、わからないかもしれません。

枯木枕「となりあう呼吸」

また、暴力と破滅の運び手さんによる「となりあう呼吸」の二次創作、「灰は灰へ、塵は塵へ」という作品もKaguya Planetでは無料公開しています。これもエッチかもしれません。よかったらこちらも読んでください。



コンテストの意義???

突然ですが、私はフェミニストです。『社会・からだ・私についてフェミニズムと考える本』(社会評論社)という本の編者をしていたり、働いているVGプラスという会社で、ライターや作家・作家志望の方に向けて「セクシュアルハラスメントについて学ぶ会」を主催したりしています。



なので、エッチな小説コンテストといってもホモソーシャルなノリを展開するつもりはありません。
募集の要項を全文読んでいただけたら、書き手にとっても審査員にとっても安心・安全な企画を目指していることがわかると思います。また、審査員たちによる一言を読んでも「様々なタイプのエッチな小説」を欲していることがわかるかと思います。

異性愛中心主義や恋愛至上主義、ホモソーシャルなどなど、何を「エッチ」と見なすかを制限してくるような価値観が社会にはいっぱいあります。でも本当は、何をエッチだと思うかは人によって違っていて、様々なバリエーションがあるはずです。「自分にとってのエッチ」とは何かを考えてみる経験や、コンテストに集まってくる多様なエッチな小説たちが、支配的な価値観を少しでも解きほぐすきっかけになったら嬉しいですね。

でもこれは、コンテストの目的ではなくて、コンテストの運営で私個人が大事にしていること、です。
なんといっても元々の動機は、「暴力と破滅の運び手さんに集まった作品をエッチがどうか評してもらうコンテストをしたらめちゃくちゃ楽しそうだからやってみたい!」ですからね。

困惑させてごめんね

コンテストをしますという発表をした後、SNSではたくさんの困惑をお見かけしました笑
何これ? 本当にやるの? ふざけた企画なのにサイトがしっかりしている…… ハートが降ってくるサイト??? 意外と規約が丁寧 審査員の一言が全然一言じゃない……などなど。
どの反応もとても楽しく読みました。企画した甲斐があった。もう満足した。という気持ちです。嘘です。応募いただいた小説を読むまでは満足ではないです。

他の原稿を書かないといけないのにエッチな小説のことが頭を離れないとか、スケジュールも発表されてないけどもう書けてしまったとか、「私にとってのエッチってなんだ……」と苦悩するお声もお見かけしました。罪なコンテストですね。このコンテストをきっかけに人生で初めて小説を書いた方もいらっしゃるみたいです。意外と有意義なコンテストかもしれません。


Kaguya Planetに掲載しているエッチな小説を紹介します

さて、長いブログを読んでくださった皆様に、私の好きなエッチな小説を紹介しましょう。Kaguya Planetに掲載している文月あや「パラサイト・ダーリン」です。

文月あや「パラサイト・ダーリン」

こちらは現在、Kaguya Planetの会員向けに公開中です。500円で会員登録していただくと読むことができます。
2023.1.2 追記:こちら、現在無料でウェブ上で読むことができます。

「パラサイト・ダーリン」は、主人公がマッチングアプリで出会った男・ナオタカと仲良くなってホテルに行ったら、ナオタカから自分は寄生虫であると告白されて……という話です。エッチだなと思うポイントは、人間である主人公と寄生虫である彼が「性欲」について独自の見解(?)を話し合うところです。
ちなみにナオタカの顔の描写がほとんどないところ、二人が等身大で合意をつくっていてその会話がポップで可愛いところも好きです。

この短編を執筆してもらったときには、エッチな小説コンテストをするということは公表していませんでした。文月あやさんから原稿をいただいたときには偶然の一致にニコニコしてしまいました。また、「パラサイト・ダーリン」とセットで公開している穂崎円「バースデー」もぜひお読みください。こちらは連作短歌です。

私が好きなエッチがわかるかもしれないし、わからないかもしれないです。感想もお待ちしています。

コメント